画人伝・茨城 画僧・武人 動物画

雪村に院体画法を伝えた常陸太田の耕山寺の僧・性安

図1:性安「蟹図」栃木県立博物館蔵

図2:雪村「葛花、竹に蟹図」群馬県立近代美術館蔵

性安(不明-不明)は、雪村と関係の深い常陸国太田村(現在の常陸太田市)の耕山寺の僧で、江戸期の画譜類には祥啓に学ぶとあるだけで、詳しい経歴は分かっていない。

性安の作品は図1の「蟹図」が知られるのみだが、本図にみられる中国宋元明の職業画家による緻密で写実的な表現(院体画法)は、祥啓が関東にもたらしたもので、それが性安そして雪村へと受け継がれ、雪村の「葛花、竹に蟹図」(図2)などが制作されたと考えられている。

参考:会津・三春で活動した戦国時代の奇想の画僧・雪村周継

性安(不明-不明)せいあん
常陸国太田村の耕山寺の住職で、画法を祥啓に学んで梅庵と号した。山水、花鳥をよく描き、画風は周文に似ていたという。82歳で死去した。

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文献:茨城の画人、茨城県立歴史館報(12)、型とイメージの系譜 関東水墨画、中世にみる型とイメージの系譜 関東水墨画の200年




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