茨木杉風「彩雲」
茨木杉風（1898-1976）は、滋賀県蒲生郡八幡町（現在の近江八幡市）の海産物問屋梅田屋の４代目・茨木芳蔵の長男として生まれた。５代目を継いで家業に従事しながら独学で画を学んでいたが、２２歳の時に上京して日本美術院の近藤浩一路に師事し、浩一路の勧めで太平洋画会研究所でも学んだ。
大正１１年、再興第９回日本美術院展に初入選し、以後も院展に出品した。昭和５年には院友に推挙されたが、昭和１２年に院展が文展と合同展を開催することが決定したことから、在野精神を貫くため院展を脱退し、「自由拘束なき新興清新なる芸術を揚達する」という目的を掲げ、ともに脱退した元院友９名とともに新興美術院を創設した。
新興美術院は、昭和１６年には大阪展を開催できるほどの人気となったが、次第に戦時色が濃くなり、昭和１９年の第７回展をもって中断せざるをえなくなった。杉風は東京を離れて故郷の近江八難に疎開し、ここで終戦を迎えた。
昭和２１年、東京に戻り戦争で中断していた新興美術院を、小林巣居人、鬼原素俊、芝垣興生、保尊良朔、田中案山子の旧同人５名と、横山仙草、岡田魚降森の新同人２名とともに再興し、自宅に事務所を置いて運営にも力を注ぎ、没するまで同展に出品した。
茨木杉風（1898-1976）いばらぎ・さんぷう
明治３１年滋賀県蒲生郡八幡町（現在の近江八幡市）生まれ。茨木吉蔵の長男。本名は芳太郎。はじめ雅号を衫風としたが昭和４０年に杉風と改めた。滋賀県立八幡商業学校を卒業後、５代目吉蔵として２年間家業に従事した。大正７年日本美術院の大林千萬樹を頼って上京し、大正９年千萬樹の紹介で近藤浩一路に師事し、同年太平洋画会研究所に入学した。大正１１年第９回院展に初入選。昭和５年日本美術院院友に推挙され、その後も院展に出品をしていたが、昭和１２年院展と文展が合同展覧会を開催することが決定したため、それに納得できない院友の同志９名とともに院展を脱退して新興美術院を結成し、昭和１９年戦時下の混乱のため展覧会を中心するまで出品を続けた。昭和２５年中断していた新興美術院展を同志とともに再興し、以後同展を中心に活動した。昭和５１年、７８歳で死去した。
滋賀(38)－画人伝・INDEX
文献：近江の画人、近江の画人たち、滋賀の日本画
『熈代勝覧』の日本橋 (アートセレクション)
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