宮本三郎「婦女三容」小松市立宮本三郎美術館蔵
宮本三郎（1905-1974）は、小松市の農家に生まれ、旧制小松中学校に入学したが２年で中退し、画家を志して兄の住む神戸を経て上京、川端画学校洋画部に入学して藤島武二の指導を受け、前田寛治、安井曾太郎にも私淑した。
昭和２年に二科展に初入選を果たし、昭和１１年に３１歳で会員、昭和１６年に３６歳で評議員に推挙されるなど若くして画壇の寵児となった。戦時中は従軍画家として戦争記録画の名作を発表し、「山下・パーシバル両司令官会見図」で帝国芸術院賞を受賞した。
昭和２０年郷里に疎開し、昭和２３年に東京に戻るまで金沢で過ごし、その間、金沢美術工芸専門学校（現在の金沢美術工芸大学）の設立に参加し、教授をつとめるなど地元の後進の育成にも大きな足跡を残した。また、昭和２２年に第二紀会（現在の二紀会）の創立に参加し、その中心的存在として会の運営にあたるなど、戦後の日本洋画壇をリードした。
なお、宮本と同時期に二科展に出品した石川県出身の洋画家としては、八田一路（1908-1991）、堀忠義（1904-1990）がいる。ともに文化学院で石井柏亭、有島生馬に学び、二科展に入選、昭和１２年に石井と有島が一水会を結成したあとは一水会に出品した。
宮本三郎（1905-1974）みやもと・さぶろう
明治３８年小松市松崎町生まれ。大正７年石川県立小松中学校（現在の石川県立小松高等学校）に入学したが、大正９年に同校を中退して画家を志し兄のいる神戸に出た。大正１１年上京し川端画学校洋画部に入学、富永勝重、藤島武二の指導を受け、のちに前田寛治、安井曾太郎にも学んだ。昭和２年第１４回二科展に初入選し、昭和１９年まで毎年出品した。昭和１３年渡欧し翌年帰国。昭和１７年陸軍省から派遣され、南方戦線に従軍取材し「山下・パーシバル両司令官会見図」を描き、翌年同作で第２回帝国芸術院賞を受賞した。昭和２０年金沢市に疎開。昭和２２年熊谷守一、田村孝之介、正宗得三郎らと第二紀会（現在の二紀会）を創立した。昭和２３年金沢美術工芸専門学校（現在の金沢美術工芸大学）の教授に就任。昭和２７年渡欧し翌年帰国。昭和２８年多摩美術大学絵画科教授に就任。昭和３３年日本美術家連盟理事長に就任。昭和４１年日本芸術院会員。昭和４２年二紀会が社団法人となり初代理事長に就任した。昭和４９年、６９歳で死去した。
八田一路（1908-1991）はった・いちろ
明治４１年金沢市生まれ。本名は慎一。大正１３年石川県立工業学校を中退して上京、文化学院に入学し、昭和３年同学院美術科を卒業し、翌年研究科を修了した。１年後輩に堀忠義がいた。昭和５年第１２回二科展に初入選し、以後１６回展まで連続入選した。昭和１２年師の石井柏亭らが二科会から分かれて一水会を結成したので同展に出品した。昭和１３年北国新聞社に入社し一時画業を中断。戦後は石川県美術文化協会の事務長をつとめるなど、石川の美術文化隆盛に貢献した。平成３年、８３歳で死去した。
堀忠義（1904-1990）ほり・ただよし
明治３７年金沢市十三間町生まれ。石川県立金沢第二中学校時代から油絵を描きはじめ、両親の反対にもかかわらず大正１５年に上京、文化学院美術科に入学し、石井柏亭、有島生馬に師事した。在学中の昭和３年に二科展に初入選した。昭和７年渡仏し、サロン・ドートンヌに入選。昭和１２年一水会設立に際し第１回展から出品した。昭和２１年日展に入選し、その後も日展に出品し、昭和２３年岡田賞、昭和４３年菊華賞を受賞し、地元洋画壇の重鎮として活躍した。平成２年、８６歳で死去した。
石川(44)－画人伝・INDEX
文献：小松市立宮本三郎美術館所蔵作品集、金沢市史資料編16(美術工芸)、石川の美術－明治・大正・昭和の歩み
最後に、絵を語る。 奇想の美術史家の特別講義
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