画人伝・栃木 洋画家 風俗図・日常風景

高木勇次ら栃木ゆかりの洋画家

高木勇次「車窓」

高木勇次「車窓」

ともに足利市に生まれた高木勇次(1911-2004)と原田平治郎(1911-1999)は、幼馴染として育った。高木は小学校卒業後、15歳で上京し鉄鋼販売に従事しながら絵を描いていたが、昭和4年に春陽会洋画研究所が開設されると入所、原田も上京してともに同研究所で中川一政、石井鶴三、木村荘八に師事し、以後春陽展を舞台に活躍した。

ほかに明治生まれの栃木県ゆかりの洋画家としては、美術教育界で指導力を発揮し日本水彩画会を中心に活躍した細島昇一(1895-1961)、宣伝広告の世界に身を置いた異色の画家・片柳忠男(1908-1985)、二科会会員として活躍した関谷陽(1902-1988)、日本中の山を踏破し山岳画を描き続けた足立真一郎(1904-1994)、戦後の抽象絵画隆盛時に活躍した文挟克明(1905-1971)、猪熊弦一郎に師事し光風展に出品した山本彪一(1912-1999)らがいる。

高木勇次(1911-2004)たかぎ・ゆうじ
明治44年足利市生まれ。昭和4年春陽会研究所で中川一政、木村荘八、石井鶴三らに師事。昭和5年春陽展入選。昭和14年春陽会会員。昭和15年紀元2600年奉祝展出品。昭和31年春陽会会員となる。昭和39年渡欧。平成16年、93歳で死去した。

原田平治郎(1911-1999)はらだ・へいじろう
明治44年足利市生まれ。春陽会洋画研究所に学ぶ。第16回春陽会展初入選。第27回春陽展で準会員に、第30回春陽展で会員に推挙された。平成11年、88歳で死去した。

細島昇一(1895-1961)ほそじま・しょういち
明治28年真岡市生まれ。大正4年栃木県師範学校卒業後、しばらく栃木県で教職についた。大正9年愛知県豊橋中学校に美術教諭として赴任、その間、独自の教育法で臨画教育に一石を投じたり、豊橋洋画協会を設立するなど地方文化の向上に貢献した。昭和9年日本水彩展で受賞し会員となった。図画振興会理事などを歴任していた関係から、昭和23年美術工芸の文部省委員となって教科書の編集に参画。昭和24年日本水彩画会の幹事となって同会の運営と発展に尽力した。昭和27年示現会会員となり、日展にも入選した。昭和34年豊橋文化賞を受賞。昭和36年、66歳で死去した。

片柳忠男(1908-1985)かたやなぎ・ただお
明治41年大田原市生まれ。16歳から油絵を描きはじめ、昭和30年鈴木信太郎、野間仁根らと一陽会を創立、指導的立場で同会の発展に貢献した。テレビ、ラジオのプロデューサー、プロモーション会社会長、広告会社社長などの職歴があり、東京都民劇場運営委員、社会教育協会常務理事などもつとめた。昭和60年、77歳で死去した。

関谷陽(1902-1988)せきや・たかし
明治35年黒羽町生まれ。父は日本画家で小室翠雲の高弟だった関谷雲崕。昭和3年東京美術学校西洋画科卒業。昭和5年フランスに約1年間留学。1930年協会第5回展に出品。昭和12年から14年まで従軍画家として中国各地に赴いた。昭和23年二科展に初出品。昭和26年同展で特選を受賞、昭和37年会員となった。翌年欧州旅行。昭和43年サロン・ドートンヌ展入選。平成元年、86歳で死去した。

足立真一郎(1904-1994)あだち・しんいちろう
明治37年足利市生まれ。上京して川端画学校に学んだ。昭和8年日本美術学校西洋画科を卒業、同年帝展に初入選した。同年光風会展で受賞。昭和21年光風会会員、同年第1回日展に入選し、以後毎年出品した。その間、都新聞(東京新聞の前身)の文化部記者を18年間つとめた。昭和35年日本山岳画協会会員となって日本中の山を踏破し、山岳を描き続けた。また、ヨーロッパ、インド、ヒマラヤも数回旅して作品を制作した。平成5年光風会名誉会員となり、同年足利市民文化功労賞を受賞。平成6年、90歳で死去した。

文挟克明(1905-1971)ふばさみ・かつあき
明治38年今市生まれ。本名は勝太郎。はじめ勝と号し、のちに克明と改号した。白日会、1930年協会、槐樹社、東光会などに出品した。第1回独立美術協会展から毎回入選を果たし、昭和23年に独立賞を受賞したが、昭和25年自由美術協会に移り、受賞して会員となった。昭和46年、66歳で死去した。

山本彪一(1912-1999)やまもと・ひょういち
明治45年鹿沼市生まれ。昭和11年早稲田大学商学部卒業。昭和13年同大学院修了。猪熊弦一郎に師事した。昭和18年文展に初入選。昭和22年光風会展でM氏賞、O氏賞を受賞し会員となった。昭和36年東南アジア、翌年欧州各地を遊学。平成11年、86歳で死去した。

栃木(36)-画人伝・INDEX

文献:栃木県歴史人物事典、栃木県の美術、足利市立美術館所蔵品図録




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