画人伝・沖縄 動物画 馬図

西洋画の技法も取り入れた元王府絵師・仲宗根真補(査丕烈)

仲宗根真補(査丕烈)「七駿馬之図」(部分)沖縄美ら島財団所蔵

1879(明治12)年の沖縄県設置を経て、琉球王国は解体された。王国が崩壊すると、それまで王府につとめていた絵師たちは失業し、在野の絵師として生きていかなくてはならなくなった。佐渡山安健(毛長禧)のあとを受けて、1865年に王府の絵師となった仲宗根真補(査丕烈)も、廃琉置県後は絵師の職を解かれ、首里の地で制作活動を続けた。それまでとは異なり、さまざまな客層に向けて絵を描くようになり、晩年には西洋画の技法も取り入れて、自分の世界を作ろうとした。

残っている作品には、沖縄県立博物館・美術館所蔵の「首里旧城之図」のように売り絵的な作品がある一方で、沖縄美ら島財団所蔵「七駿馬之図」(掲載作品)のような意欲的な作品もある。それまでの王朝絵画に見られる馬の絵は、ほとんどが横向きだったが、この絵の7頭の馬は、それぞれが別の視線と方向性を持ち、異なった角度から描かれている。画家自身の心の在り方を映しているかのように、各々が意味ありげな表情をしている。

仲宗根真補(1843-1919?)
1843(天保14)年首里生まれ。唐名は査丕烈。童名は真三良、雅号は嶂山。仲宗根真栄の二男。家譜によると、1865年に絵師に登用され、筑登之座敷に叙せられたのが最後の記録になっている。作品に「七駿馬之図」のほか「琴碁遊山之図」「首里旧城之図」「山水図」「月下神猫図」「牡丹之図」などがある。1919年ころ死去した。

沖縄(13)-画人伝・INDEX

文献:沖縄美術全集4、琉球絵画展、すぐわかる沖縄の美術




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