画人伝・鳥取 南画・文人画家

鳥取ゆかりの近世南画家

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米子の漁師の家に生まれ、のちに大山寺に入って僧となった嗒然(1796-1861)は、独学で画法を修得し、「嗒然の千枚書き」と称されるほど多くの作品を残した。おなじ米子出身の越寛一(1803-1864)は、江戸に出て谷文晁に学び、諸国を巡遊したのち京都に留まり、文人墨客と交友を重ねた。大阪堺に生まれた牧野芝石(1840-1903)は、鳥取出身の父の跡を継いで医師をしていたが、学問を好み、書画をよくし、幕末には鳥取に戻って画を描いた。奈良の寺の家に生まれた三枝真洞(1840-1868)は、幕末の混乱期に因幡・伯耆の各地を転々としながら寺子屋を開いて子弟を教え、多くの詩書画を残した。また、幕末に鳥取に生まれ、明治以降に活躍した南画家としては、黒部拈華(1856-1933)、岩越鉄庵(1846-不明)、中住道雲(1858-1943)らがいる。

嗒然(1796-1861)
寛政8年米子皆生生まれ。実家は漁師。本姓は八幡。幼いころから画を好み、指で砂に馬を描き、爪で壁に牛の図を刻んで遊んでいたという。11歳の時に大山寺西明院谷円流の僧務となり、台腎に師事し、剃髪して名を台貫と改めた。そのかたわら画をよくし、40歳ころからしばしば八幡、岸本、安来方面に滞在し、書画漢詩などに没頭した。晩年は大山寺を出て八幡村に草庵を営み、迎嶽観主人太虚と号した。「嗒然の千枚書き」と称されるほど多くの作品を残した。文久元年、66歳で死去した。

越寛一(1803-1864)
享和3年米子生まれ。船越寛一とも称した。商家・牧野家に生まれ、のちに豪農・船越龍叟の養子となった。本名は船越太郎右衛門道貞、幼名は松太郎、諱は道貞。別号に岱雲、了秀、寛冽、馬晁、了晁、牧寛一、翠雲越寛一、白嶺越寛一などがある。画を好んだ養父の影響で、幼いころから船越家に来る各地の文人墨客たちから文化的な刺激を受けて育った。19歳の時に鳥取で数カ月修行したのち、江戸に出て谷文晁に師事した。同年、父の病気のため帰郷したが、再び山陽、長崎、諫早、岡山、名古屋、京都を遊歴し、京都では四条派の岡本豊彦やその養子・亮彦と交流し、数点の合作を残している。40歳頃、父の死を機に帰郷し、船越家7代目として父の手掛けた新田開拓事業を引き継いだ。以後は米子に留まり、訪れてくる文人墨客をもてなし、風雅を楽しんだ。文久4年、62歳で死去した。

牧野芝石(1840-1903)
天保11年大阪堺生まれ。名は順造。父の佐々木北洋は鳥取鹿野の出身の医師。名は静修。佐々木伯堂と称し、のちに鳥取藩ゆかりの牧野家を継いだ。別号に雲烟眼過處主人、十梅堂主人などがある。若いころから学問を好み、書をよくし、詩文を藤井竹外、森田節斎に学び、のちに正墻適処に学び、画を父に学んだ。はじめ家業を継ぎ医師をしていたが、勤王の志を抱き、全国の志士と交友し、大和の十津川の変に際して志士を隠匿した疑いにより堺を逃れ鳥取に移住した。晩年は鳥取中学校の書道教授をつとめた。南画の普及につとめ、浄瑠璃を愛した。酒豪であったため病み、明治36年、64歳で死去した。

三枝真洞(1840-1868)
天保11年大和国生まれ。実家は浄土真宗浄蓮寺。本名は蓊、僧名は浄尚。別号に青荷、青樵堂、山跡方外史、真洞人などがある。近くの村の今村文吾の私塾に通って儒学、国学を修め、京都に出て伴林光平に国学、和歌、書を学び、藤本鉄石に南画の技法を学んだ。文久3年、天誅組の挙に応じて大和五条に馳せ参じたが失敗し、但馬を経て因幡に逃れた。その後、因幡・伯耆の各地を転々としながら、飯田年平や正墻適処らと交流し、寺子屋を開いて子弟を教え、多くの詩書画を残した。鳥取を去った翌年の慶応4年、天皇謁見途上の英国公使パークスの一行を、浪士林田衛太郎と二人で智恩院付近で襲ったが失敗し、捕らえられて処刑された。34歳だった。

黒部拈華(1856-1933)
安政3年鳥取市辻売町生まれ。本部泰翁の義弟。牧野芝石と交流があった。京都に出て日根対山に南画を学んだのち、東京に出て学問を修めた。昭和8年、78歳で死去した。

岩越鉄庵(1846-不明)
弘化3年生まれ。鳥取市中町に住んでいた。長三洲の流れを汲み、山水花鳥を得意とした。第2回内国絵画共進会にも出品した。

中住道雲(1858-1943)
安政5年鳥取市職人町生まれ。中住憲梁の子。名は憲明。別号に桃生柳雨がある。幼いころから画を好み、祖父・虎岳について土佐派の画法を学び、のちに狩野派の藤岡神山に入門、ついで稲岡天真に南画を学び、さらに蓮井竹山に円山派を学んだという。全国絵画共進会で三等賞を受けるなど各展で受賞した。昭和18年、86歳で死去した。

文献:藩政時代の絵師たち藩政時代の写生画と文人画、米子美術館所蔵目録Ⅱ、鳥取縣書画百藝名人集

定本日本絵画論大成 (第7巻)
ぺりかん社







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