
田村孝之介「佐野部隊長還らざる大野挺身隊と訣別す」東京国立近代美術館(無期限貸与作品)
田村孝之介は、大阪船場に生まれ、小出楢重に師事した。戦前は二科会を中心に活動する一方で、昭和6年頃に六甲洋画研究所を開設し、兵庫県洋画壇の発展に尽くした。戦争画に関しては、第1回聖戦美術展に一般公募から出品して以後、作戦記録画の常連となり、6点の記録画を制作している。これは藤田嗣治、中村研一、宮本三郎に次ぐ作品数である。
掲載の「佐野部隊長還らざる大野挺身隊と訣別す」は、昭和19年の陸軍美術展に展示されたもので、ガダルカナル島で米軍指揮中枢に奇襲をかけ帰還することのなかった大野挺身隊を主題としている。描かれているのは、大野挺身隊の3名が第38師団長佐野忠義中将から別盃を受けるシーンで、この時期のガダルカナル島での取材は不可能だったことから、制作にあたっては同師団の生還者3名の話を元にしたと、田村自身が戦後に回想している。
田村孝之介(1903-1986)たむら・こうのすけ
→二紀会の創立に参加し日本洋画壇の中心的存在として活躍した田村孝之介
大阪(149)-画人伝・INDEX
文献:戦争と美術