画人伝・北海道 アイヌ絵 風俗図・日常風景

狩猟や漁業を主な題材にした千島春里

千島春里「アイヌ漁労図」

アイヌ絵の作者は経歴不明な絵師が多いが、千島春里(不明-不明)に関しても経歴を知る資料が少なく、さらに複数の名前が知られている。それは、画風の変化や展開にともなって本人が名前を変えたものなのか、あるいは師弟関係にあった別人のものなのかも定かではない。つまり、千島春里は、伊藤鳳鳴、松前春里、藤鳳鳴、藤原與昌などの印章落款を持つ作品の作者の総称といってもいい。活動期を推定できる明確な資料はないが、19世紀初頭に、おそらく松前を中心に、72歳まで活動していたと推測されている。名前が公的な記録にはみられないことから、武家ではなく町絵師として活動していたと思われる。

千島春里がもっとも多く描いた画題は、狩猟と漁業に関するものである。先達や同時代の絵師の影響を受けた作品なども多数みられ、サハリンの風俗など実際には見聞できなかった風俗も描いている。また、フクロウの飼育や酔っ払って帰る様子など、春里独自の画題と見られるものもある。

千島春里(不明-不明)
伊藤鳳鳴、松前春里、藤鳳鳴、藤原與昌などの別号がある。作品には「蝦夷人之図」「熊狩図」「狩猟図」「酔帰之図」「狩猟之図」「アイヌ夫婦梟飼養の図」「蝦夷風俗屏風」「アイヌ漁労図」「蝦夷人魚突之図」「蝦夷人鹿狩之図」「アイヌ人物図」などがある。

北海道(5)-画人伝・INDEX

文献:蝦夷風俗画展「アイヌ風俗画」の研究-近世北海道におけるアイヌと美術、アイヌ絵




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