画人伝・山口 円山四条派 静物画

森寛斎と山口の門人

森寛斎「古柏猴鹿図」宮内庁三の丸尚蔵館蔵

萩藩士の子として生まれた森寛斎(1814-1894)は、幼年期に、四条派や岸派の画風を学んだと思われる画家・大田龍について画を学び、18歳になると、上坂する藩士に随行し、森徹山に入門したが、事情によりまもなく帰郷、25歳で再入門した。その後、徹山の信頼を得て、表向きには徹山の実子として、実際には森一鳳の弟、つまり徹山の養子となった。徹山没後は、しばらく四国・中国地方を遊歴、この時に南宗画法を習得したと伝えられる。備中倉敷に滞在した際には、野呂介石の門人である三宅西浦と親しく交友し「岩石の皴や山峰の脈胳」などの描き方を参考にしたという。幕末には、長州人として同郷の山県有朋や品川弥二郎ら尊皇攘夷派と交わり、幕吏の眼をかわし、京都の事情を長州に伝えるべく、京都と長州の間をしばしば往復した。画家としての身分や表向きには徹山の実子であったことなどが隠れ蓑となったという。この間も、積極的な作画を展開しており、四国琴平の金刀比羅宮表書院の応挙の襖絵を修復し、安政の御所造営の際には杉戸絵揮毫に参加した。また、現在山口県立美術館所蔵の一連の写生画類のほとんどが、この幕末期に描かれたものである。明治維新以降は、「如雲社」の中心人物として活躍、さらに各展で受賞を重ね、帝室技術員制度が発足した際には帝室技室員に推されるなど、京都を代表する画家となった。後進の育成にも尽力し、山元春挙、野村文挙らを育てた。山口の門人としては、巌島虹石、田総百山がいる。

森寛斎(1814-1894)
文化11年萩生まれ。萩藩士・石田傳内道政の三男。幼名は幸吉、諱は公粛、字は子容。別号に桃蹊、晩山、寛仲などがある。幼いころから画を好み、12歳の時に萩の画家・大田龍に入門。18歳の時に大坂に出て円山応挙門下の森徹山に入門したが、事情によりまもなく帰郷、その後本格的に徹山に師事するようになったのは25歳の時だった。わずかな時間で徹山の信用を得て養子となった。幕末は長州の尊皇攘夷派らと交流するかたわら、画業も積極的に展開し、安政2年、御所造営に加わり常御殿西縁座敷南の杉戸に「帰去来」「赤壁」を描き、安政6年には金刀比羅宮表書院の円山応挙の襖絵補修に携わった。明治維新後は、京都在住の画家たちが画塾をこえて集まった画家団体「如雲社」(のちの京都後素協会)の世話役をつとめ、明治10年の塩川文麟の没後は、実質的に寛斎がこの如雲社の中心人物となった。明治14年内国勧業博覧会で三等妙技賞を受賞、明治15年の第1回内国絵画共進会で銀賞で受賞した。明治23年、第3回日本美術協会展で特別を受賞、この年に帝室技術員制度が発足、推されて帝室技室員となった。明治27年、81歳で死去した。

参考:UAG美人画研究室(森寛斎)

巌島虹石(1869-1903)
明治2年光市島田生まれ。はじめ立野の難波覃庵に南画を学び、のちに京都の森寛斎に師事した。別号に公貫、子敏、乾山、巌州、志芸遠、鶴羽山などがある。絵画共進会や美術展覧会に出品して受賞したが、不慮の事故がもとで病気がちとなり帰郷、明治36年、34歳で死去した。

田総百山(1871-1953)
明治4年萩生まれ。京都の森寛斎に学び、のちに東京に出て橋本雅邦に師事した。その後は、岐阜、三重、萩などで教鞭をとった。昭和28年、83歳で死去した。

山口(10)画人伝・INDEX

文献:山口県の美術下関市立美術館所蔵品目録Ⅰ




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