
「鳥獣人物戯画」(甲巻部分)国宝、京都・高山寺蔵
「鳥獣人物戯画」(国宝、京都・高山寺蔵)は、平安後期から鎌倉初期に描かれた絵巻物で、甲・乙・丙・丁の4巻からなっている。墨の線だけで描かれた白描の傑作で、日本絵画史上もっとも有名な作品のひとつといえる。作者を含め多くの謎が残されているが、近年の修復で、断簡と絵巻の接続など、本来の姿の復元につながる多くのことが明らかになっている。
もっとも親しまれている甲巻には、兎、蛙、猿など擬人化された動物が遊び戯れるさまが描かれ、乙巻には、実在の動物に空想上の動物も含めさまざまな動物が「動物として」描かれている。丙巻前半では、僧侶や庶民がいろいろな遊びに興じ、後半では兎、蛙、猿が競馬や蹴鞠に興じている。丁巻には、主に人物による遊びや儀式など日常的な場面が描かれている。
動物の擬人化とユーモア表現によって当時の人々の生活や風俗が生き生きと描かれており、後世の漫画表現や風俗画に影響を与えたとされ、漫画のルーツともいわれる。作者は戯画の名手・鳥羽僧正覚猷と伝えられるが、確証はない。線描が仏画に通ずるものがあり、寺院で稚児の教育のために描かれたとする説もある。
京都(01)-画人伝・INDEX