日高昌克 米国個展記念特輯
日高昌克 米国個展記念特輯 |
美術評論家・岩崎真澄の寄稿文から一部抜粋
大正年代中期に新進気鋭の美術評論家として活躍し、日高昌克を米国に紹介する切っ掛けを作った、和歌山大学長・岩崎真澄の寄稿文の文頭の一部を抜粋。
日高昌克の芸術は、日本では一部の識者と愛好者を除いて、一般にはあまり知られていない。「画壇」のそとに孤高を保ちながら、光芒を放っている程度にすぎない。しかるに一九五七から五八年にかけて、アメリカでその個展が開かれたときには、別項の記録に見られるように、当初から素晴らしい好評を博し、トップ・テンに属する美術館に堂々と並べられたばかりでなく、美術の専門家によって激賞せられ、一流新聞で一流の批評家によって理解ある讃辞が呈せられ、またわざわざ昌克芸術について講演がなされたりさえした。
<中略>
芸術の真価はその時の大衆に認められるから価値があるのではない。それは時流に左右されるべきものではない。量の評価でなくして、質の評価こそ尊重さるべきである。従って昌克の芸術が派閥根性と喧騒な宣伝と利害関係のからんだ商業主義の渦巻く日本の社会に認められないとしても、海の彼方において、白紙の状態で具眼の人たちに高く評価されたということは、時流を超え国境を超えた実質的価値批判として受けとるべきであり、同時にわが国においても、あらためて昌克の芸術を見直す機縁となってもいいのではかいかと思われる。