仙台の重要な祭礼のひとつに、陸奥国分寺に隣接する白山神社の「ぼんぼこ祭」がある。これは、秋の東照宮、大崎八幡宮の両大祭に拮抗する、春の城下の代表的祭礼で、伊達以前の代から継承されている伝統的行事である。
掲載の「ぼんぼこ祭図」は、江戸後期の俳人・遠藤曰人が描いたもので、祭の様子が軽妙なタッチで生き生きと表現されている。上段には、流鏑馬の的を奪い合う神事「的ばやい」の群集が描かれており、境内では軽業師による「はしご乗り」が披露され、包丁人による大鯛料理が振る舞われている。子どもたちが覗いているのは「堤人形とぼんぼこ槍売り」の店である。
特筆すべきは「ラクダの見世物」で、大きな絵姿と幟の立つ小屋に、多くの人々が詰め掛けている様子が描かれており、大人気ぶりがうかがえる。この作品の制作年代は特定されていないが、江戸でラクダの興行があり、菊田伊徳がそれを写生して「駱駝図」を描いたのが文政7年9月のことなので、この祭礼は春行なわれていることから、翌文政8年の春の作品と思われる。
遠藤曰人(1758-1836)えんどう・あつじん
宝暦8年桃生郡寺崎生まれ。仙台藩士で俳人。本姓は木村で、遠藤家を継いだ。名は定矩、字は文規、通称は清右衛門、のちに伊豆之介と改めた。経史を志村五城に学び、詩号は碧城。書画に長じ、絵画作品も多く残っている。天保7年、79歳で死去した。
宮城(13)-画人伝・INDEX
文献:仙台市史特別編3(美術工芸)、仙台画人伝