江戸時代を中心に全国各地で活動していた画家を調査して都道府県別に紹介しています。ただいま近畿地方を探索中。

UAG美術家研究所

京都・天龍寺の「夢窓疎石像」を描いた無等周位

無等周位「夢窓疎石像」重文 京都・天龍寺妙智院蔵

夢窓疎石(1275-1351)は、鎌倉時代から南北朝時代に活躍した臨済宗の僧で、諸寺を歴任したのち、鎌倉幕府滅亡後は足利尊氏・直義の依頼を受けて京都・天龍寺を開山した。禅的教養のもとで、詩文、書、作庭など多彩な文化的活動を展開し、門下からはすぐれた人材が出て、夢窓派は室町時代の禅宗の主流として隆興した。

夢窓の頂相は数多く残っているが、掲載の「夢窓疎石像」はそのうち最も卓越した作風を示す作例として知られている。夢窓の賛があり、右下に「無等周位」の印がある。作者の無等周位は、夢窓に近侍した僧で、本図のほか京都・西芳寺の壁画や十牛図巻、羅漢図などを手掛けたことが史料により分かっているが、現在確認できるのは本作のみである。

無等周位(不明-不明)むとう・しゅうい
南北朝時代の画僧。夢窓疎石に嗣法して侍者となった。現存の「夢窓疎石像」のほか暦応4年、貞和5年にも夢窓の頂相を描いたことが知られる。また京都・西芳寺の壁画を描き、観応2年光明上皇に献上した「十牛図」も描いたとされる。

京都(15)-画人伝・INDEX

文献:日本美術全集9、日本の美術12 周文から雪舟へ