江戸時代を中心に全国各地で活動していた画家を調査して都道府県別に紹介しています。ただいま近畿地方を探索中。

UAG美術家研究所

関西における創作版画運動の草分けとなった川西英

川西英「曲馬」兵庫県立美術館蔵

川西英(1894-1965)は、兵庫県神戸市兵庫区の回船業と乾物米穀問屋を代々営む旧家に生まれた。早くから美術に親しみ、兵庫県立神戸商業高校卒業時には、神戸市相生町の洋風喫茶店「カフェー・ブラジル」で油絵の個展を開いた。

その後、創作版画運動を展開した山本鼎竹久夢二の仕事に感化を受け、木版画に本格的に取り組むようになり、大正11年、28歳の時に神戸三宮で開かれた創作版画展覧会に初出品し、翌年の第5回日本創作版画協会展に初入選した。

昭和4年には北村今三、春村ただを、福井市郎、菅藤霞仙らと版画グループ「三紅会」を結成し、京阪神で展覧会や版画講習会などを開催、関西における創作版画運動の草分けとして活躍した。

サーカス、奇術、歌劇など、ハイカラで開放的な雰囲気漂う港都神戸の文物を題材に、鮮やかな色彩と大胆なデフォルメで表現し、「サーカス」「曲馬帖」などの版画本を発行した。また、神戸大丸の新館落成にあわせて神戸の風景を題材にした「神戸百景」シリーズを発表し好評を博した。

川西英(1894-1965)かわにし・ひで
明治27年兵庫県神戸市兵庫区生まれ。本名は英雄。生家は代々「淡路屋」という屋号で回船業と乾物米穀問屋を営んでいた。大正4年兵庫県立神戸商業学校を卒業。油絵の個展を開いたが、その後山本鼎らに惹かれて木版画に転じた。大正11年兵庫東出郵便局長に就任。大正12年第5回日本創作版画協会展に初入選。昭和3年第7回国画創作協会展に初入選。以後両展に出品した。版画コラクター兼出版人の山口久吉が主宰する「神戸版画の家」発行の版画誌「HANGA」に作品を発表。昭和4年版画グループ「三紅会」を結成。昭和7年日本版画協会会員、昭和10年国画会会員となった。昭和40年、70歳で死去した。

兵庫(45)-画人伝・INDEX

文献:兵庫の美術家県内洋画壇回顧展、神戸ゆかりの芸術家たち、兵庫県立美術館所蔵作品選、コレクションでたどる姫路市立美術館の25年、兵庫の絵画100年展、明治・大正神戸生まれの芸術家たち、神戸洋画会とモダニズムの継承者