藤原隆章・隆昌「慕帰絵」第6巻の部分 重文 京都・西本願寺蔵
京都・西本願寺に伝わる「慕帰絵」は、親鸞の曾孫で本願寺三世となった覚如の生涯を綴った高僧伝絵巻で、門弟の乗専を発起人に、覚如の没後まもなく制作された。覚如の生誕から宗教者として成長をとげていく過程を主題としているが、詩歌を好む風雅人としての側面も強調されている。
絵を担当した藤原隆章・隆昌父子は、南北朝期を代表する絵師で、ともに京都祇園社の大絵師職をつとめた。作風は、高階隆兼を基盤としながらも、建築描写においては極度の完璧さを求めず、彩色においても淡さを指向している。
本図は、本願寺の重宝として厳重に保管されていたが、文明年間に足利将軍家に貸し出した際、全10巻のうち第1巻と第7巻が紛失したことから、この部分は飛鳥井雅康(詞書)と掃部助久信(絵)によって文明14年に補作された。
藤原隆章(不明-不明)ふじわら・の・たかあき
南北朝時代の画家。法名は覚智。京都祇園社の大絵師職をつとめ、因幡守に任じられた。「慕帰絵」の第2巻、第5巻、第6巻、第8巻を描いた。延文元年高階隆盛や子の隆昌らとともに「諏訪神社縁起絵巻」の制作に携わった。
藤原隆昌(不明-不明)ふじわら・の・たかまさ
南北朝時代の画家。藤原隆章の子とされる。京都祇園社の大絵師職をつとめ、摂津守に任じられた。「慕帰絵」の第3巻、第4巻、第9巻、第10巻を描いた。延文元年父らと「諏訪神社縁起絵巻」の制作に携わった。
京都(34)-画人伝・INDEX
文献:やまと絵 日本絵画の原点、日本美術全集9、日本画家人名事典