江戸時代を中心に全国各地で活動していた画家を調査して都道府県別に紹介しています。ただいま近畿地方を探索中。

UAG美術家研究所

その半生を花鳥画の制作と鳥類の生態研究にささげ、本格的な鳥類画集『鳥類写生図譜』を刊行した土岡春郊

土岡春郊『鳥類写生図譜』より「かうらいうぐひす」

福井県王子保村(現在の越前市)に生まれた土岡春郊(1891-1959)は、武生中学時代から画才を認められ、中学卒業後は東京美術学校日本画科に進学し、結城素明、小泉勝爾に師事した。大正5年の同校卒業後は、上落合のアトリエで多くの鳥類を自ら飼育し、写生を続けるとともに広く愛鳥家とも交友し、鳥類の研究と花鳥画の制作に専念した。

昭和2年、東京美術学校時代の恩師だった結城素明や日本鳥学会会長の鷹司信輔らの推奨もあり、本格的な鳥類画集『鳥類写生図譜』の刊行に着手し、関係各位からの資金援助もあり、昭和14年に完成させた。その間、院展にも出品、新樹会、黒潮会会員、鳥の会会員として活躍した。

土岡春郊(1891-1959)つちおか・しゅんこう
明治24年福井県王子保村(現在の越前市)生まれ。本名は泉。土岡秀太郎の兄。花鳥画制作・鳥類生態を研究し、昭和2年から10余年かけて本格的な鳥類画集『鳥類写生図譜』を刊行。その半生を花鳥画制作と鳥類の生態研究にささげ「鳥の春郊」といわれた。昭和6年には鳥の会主催の展覧会で名誉賞を受賞。昭和20年故郷に帰り福井大学講師、県文化協議会常任委員、野鳥の会の顧問をつとめた。昭和34年、67歳で死去した。没後、福井県文化協会より文化賞を贈られた。

福井(24)-画人伝・INDEX

文献:鳥類写生図譜