月岡雪鼎「唐美人画」奈良県立美術館蔵
月岡雪鼎（1710-1787）は、滋賀県蒲生郡大谷村（現在の日野町大谷）に生まれた。本姓は木田といい、号は信天翁、露仁斎などたくさんあるが、雪鼎がもっとも知られている。姓の「月岡」も最初は号で、故郷の月岡山からとったもので「げっこう」と読んだ。
ところが、世間の人が印章の月岡を見て姓だと思い、「月岡雪鼎」と呼ばれることが多かったため、本姓の木田を捨てて月岡を姓とした。子の雪斎、雪渓も絵師となったが、月岡の姓を名乗っている。
『近江蒲生郡志』によれば、雪鼎は壮年になってから画を近所に住んでいた高田敬輔に学んだとある。その後大坂に移り住んで、日本絵画の古典や中国画の筆法を研究するとともに、西川祐信の画風を慕い、独自の画法を身につけたと思われる。
師の敬輔と同様に仁和寺出入りの絵師となり、同寺から明和２年に法橋、安永２年に法眼に叙された。風俗画、なかでも美人画を得意とし、春画も手掛けたが、法眼になってからは王朝文化を題材とする古典人物画を多く手掛けるようになった。
月岡派の祖として、子の雪斎、雪渓をはじめ、墨江武禅、桂雪典、初代岡田玉山、蔀関月ら多くの門人を世に送り出した。雪斎の養子（異説もあるが）となった月岡芳年は、幕末明治期の浮世絵師として活躍した。
月岡雪鼎（1710-1787）つきおか・せってい
宝永７年滋賀県蒲生郡大谷村（現在の日野町大谷）生まれ。本姓は木田、名は昌信、字は大溪、通称は丹下。別号に信天翁、露仁斎、日窓、錦童、月岡などがある。画を高田敬輔に学び、のちに大坂に出て西川祐信の画風を慕い、美人風俗画を描くようになった。明和年間頃から肉筆美人画を制作し、春画も得意とした。画譜『金玉画府』に浮世絵擁護論を説いた。明和２年法橋に、安永元年法眼に叙された。天明６年、７７歳で死去した。
月岡雪斎（不明-1839）つきおか・せっさい
大坂生まれ。月岡雪鼎の長男。名は秀栄、字は大素、通称は為三郎。父雪鼎に学び花鳥人物をよくし、父と同じく法眼に叙された。江戸調の味を美人画に加えて人気を博した。天保１０年、江戸において死去した。
月岡雪渓（不明-不明）つきおか・せっけい
大坂生まれ。月岡雪鼎の二男。父雪鼎及び兄雪斎に学んで風俗人物画をよくしたといわれるが、天保ごろ大阪で死去した。
滋賀(07)－画人伝・INDEX
文献：近江湖東・湖南の画人たち、近江の画人たち、近江の画人